『デクスター〜警察官は殺人鬼』にグッときてる自分は本当にヤバいのか?


現職の警察官でいながらシリアル・キラーという設定を、まずは知った。米ドラ犯罪ものも、行くところまで行ったなあと思ったが、実際観てみると設定から想像したほどのブッ飛んだものではなかった。伝統的な刑事ミステリーに、近年当たり前になったサイコなフレーバーをたっぷり振りかければこうなるだろう、という感じのドラマである。

シリアル・キラーといっても、主人公の青年デクスターが殺すのは、いわゆる「法で裁けぬ悪」限定で、つまりはアメリカ版『必殺仕事人』なのだ。このへん、さすがに無差別殺人者が主人公では問題ありすぎとのCBSの判断か。

ただ、やはりこのドラマの設定が異色なのは、デクスターの殺人が「悪人を成敗するため」ではなく、あくまで「殺人の欲求を満たすため」であることだろう。殺人に対する罪悪感がゼロなデクスターにとって、たとえ相手が無実の女子供であろうが殺すことは本来ノープロブレム。ではなぜ悪人しか殺さないかというと、彼の異常な欲求を少年時代から見抜いていた亡父から示された「殺しの掟」を忠実に守っているからにすぎない。

とにかく異様な設定だが、何話も観ているうち、デクスターの人物像に妙な共感を覚えている自分に気が付いて、実はちょっと笑ってしまった。連続殺人犯という表層に包まれているものの、デクスターのキャラクターには、厭世的なタイプの現代人(俺)なら誰でも覚えがあるような要素が含まれているのだ。

他人との接触を極力避けたがる、デート中も「ひとりになりたい…」と内心思っている、職場では自ら設定した「役柄」を演じるよう心がけている、なにより個人的趣味や欲求を最優先事項としている、などなど。まあ、その「趣味」が殺人という点がまずいんですが(笑)。

このキャラクターの吸引力に加えて、なぜデクスターは殺人鬼と化したのか? という疑問をタテ軸にしたミステリー的展開が非常に面白く、シーズンの終盤ではかなり意外なオチもあり。ある意味、感動的といってもいいクライマックスにグッときつつ、「いいのかな?」という疑念も。

全12話の半分あたりから自分のなかでスイッチが入り、とうとうある週末の深夜に徹夜で第1シーズンを最後まで観る事態に……。多少のユーモアはあるものの、血まみれのえぐい現場やバラバラ死体ばっかり出てくるドラマゆえ、週明けはしばらくグッタリでしたが。

ところでデクスター役、マイケル・C・ホール。『シックス・フィート・アンダー』のゲイの葬儀屋といい、なぜかひねった役ばかり来る。ハンサムだけど、いかにも何かを隠しているっぽいムードゆえでしょうか?


「FOX CRIME公式ページ」
http://foxcrime.jp/bangumi/dexter/index.shtml

★朝の身支度を描写しているだけなのに、なぜかものすごく恐ろしい傑作OP!