バランスを崩した2人の主人公〜『HOMELAND/ホームランド』


FOXCRIMEで放送されたポリティカル・サスペンス・ドラマ『HOMELAND/ホームランド』。期待よりずっと面白くて、シーズ
ン1・全12話を一気に観てしまった。

製作・脚本の中心となっているのは、『24-TWENTY FOUR』のアレックス・ガンザらだが、“テロとの戦い”を題材としている点は『24〜』と同じでも、作品のタッチはまったくと言っていいほど違う。『HOMELAND/ホームランド』には、派手な銃撃戦もカーチェイスも登場しない。二転三転するプロットの緊張感は十分楽しめるものの、メインはアクションではなく、屈折した主要人物たちが織り成すヒリヒリとした心理劇である。

イラク戦争下で捕虜となり、数年の投獄を経て発見・救出されたアメリカ軍海兵隊ブロディ軍曹。そんな彼を、実はアルカイーダに転向したテロリストでないかと執拗に疑うCIA作戦担当官キャリー。

視聴者は、キャリーと共にブロディ軍曹が敵か?味方か?を見極めようとする。ところがこのドラマでは、正体不明のブロディ軍曹以上に、精神的に危うい側面を抱えたキャリーのキャラクターの方がむしろ視聴者の不安を煽る。

テロという大状況を扱いつつ、それぞれバランスを崩した2人の主人公が激しく引き合い、ぶつかり合うパーソナルな物語であるのがとても面白い。

映画では長い間ぱっとしなかったクレア・デインズだが、今回のキャリー役は爆発的なインパクト! 決して好ましい人物の役柄ではないくせに、キャリーが次に何をするのか目が離せなくなる狂気の熱演で魅せる。脇役では、『クリミナル・マインド FBI行動分析課』のギデオン捜査官でお馴染マンディ・パティンキンが、キャリーの恩師で唯一の理解者を重厚に演じていて、とにかく素晴らしい。

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