再訪『ふぞろいの林檎たち』(その1)


プロフィール欄で、海外ドラマについて書きますと宣言しておいてなんですが、最近スカパー!TBSチャンネルで一挙放送されたこともあり、名作『ふぞろいの林檎たち』を見返しています。パートⅠの放送が1983年だから、リアルタイムでの鑑賞から考えると実に23年ぶりですか。当時自分が中学生だったので、ドラマのなかで大学生である中井貴一たちの暮らしぶりを、無意識に何年後かの己のシミュレーションとして眺めていた記憶があります。だからか、彼らが社会の厳しさに直面するパートⅡは一種のトラウマになるほどで、その後の自分のモラトリアムっぷりに拍車をかける一因ともなり・・・。


なんてことはともかく、今観てもやっぱり文句なくおもしろいドラマです。このドラマが当時強いインパクトを与えた理由は、これ以前の『岸辺のアルバム』などに続いて、従来のドラマのタブー破りを次々とやってみせたからだと思うんですね。三流大学生と看護学校の生徒という主人公たちの設定は言わずもがなですが、第1話の冒頭で高橋ひとみのヌードをいきなり出すことに象徴されるように、意外なほど生々しく性に関する本音を描いたり、通常は背景や敵対する存在としてしか捉えられない親の世代の心情もぞっとするほどリアルに吐き出させたりと、視聴者がテレビドラマを観るときくらい、できれば素通りしたいような要素ほど、しつこく、丁寧に暴き出していました。


それと山田太一がやはりうまいと思うのは、日常ドラマのなかにサスペンスを起こして、視聴者を引っ張り込む、その豪腕ぶりです。パートⅠでは、中井貴一高橋ひとみの個人的背景を知っていく過程のスリルや、時任三郎が夜景のバイト中、取引先の部長を自殺から救うシーンの緊迫感など、演出陣の充実ぶりもあって、結果を知っていても目が離せなくなります。


もちろん太一が個々の俳優本人の特質を捉えた上での、登場人物たちのキャラクター造形の巧みさがすべてのベースにあるのですが、そのあたりについてはまた。

ふぞろいの林檎たち DVD-BOX

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