’07年おもしろかった漫画(1)『そして-子連れ狼刺客の子』


去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(1)です。

まずこれ。「萌え」ならぬ「燃え」に飢えているなら絶対おすすめ。
とにかくいちいち面白すぎる! さすが大御所・小池先生、活劇における興奮のツボというものを知り尽くしておられる。

オリジナル『子連れ狼』の漫画は、恥ずかしながらきちんと読んだことがなく、この『刺客の子』がオリジナルの続編のさらなる続編、ということさえよく知らずに読み始めた次第。「子連れ」とタイトルにあるにも関わらず、主人公は拝一刀の子・大五郎で、しかもわけあって一人ぼっちになった大五郎が江戸城に捕らえられているところから物語が始まる。全然「子連れ」じゃないし(笑)。

座頭市』も『子連れ狼』も「燃え」の原動力となっているのは、言うまでもなく「盲目」や「子連れ」というハンデだ。0の者が100の者に勝つよりも、マイナス100のものが100の者に勝つほうが振幅は大きいわけで、結果、社会的弱者が強者を打ち砕くという娯楽の仕組みをより強調することになる。

『そして-子連れ狼刺客の子』では、まさに主人公が「子供」であるというハンデが「燃え」のガソリンである。わずか5歳の大五郎だが、幾多の修羅場をくぐり、剣豪であるふたりの父に教えを受けているため、恐ろしいほどの剣術と体技を会得しているという設定。序盤の、実質は大五郎を処刑するための、城の師範代との1VS1の決闘シーンで、いきなり僕の中の「燃え」メーターはフルスロットルになった。

また、その大五郎が前作の養父から譲り受けた剣技というのが、いいんだわ。
示現流・蜻蛉の構え。上段に構えた剣を相手に斬られる前に振り下ろすのみ、というシンプルな技。もしよけられた場合は、刀を投げて相手を貫く。これだけ。示現流に受け太刀(だち)なし。しくじれば死あるのみ。燃えるなあ。

江戸城の地下に広がる巨大なダンジョン(“弾掌”と表記。いいなあ笑)に大五郎が放り込まれたり、その“弾掌”内部に何十年も住み着いている奇怪な武者(「苦しいわえ〜、死にたいわえ〜」と見開きで絶叫!)がいたりと、こういうアナーキーな感覚・発想って『バガボンド』では百年たっても出てこないでしょう。また節々に出てくる大五郎の父への思慕の情が泣かせるったらない。

あまりにも面白いので、オリジナルから読破しようと思ったが、意外にもファースト『子連れ狼』は入手困難。しかたないので、前作に遡り『新・子連れ狼』読んでます。こちらがまた滅法おもしろい!


そしてー子連れ狼刺客の子 1 (キングシリーズ 刃コミックス)

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