漫画

何度も読み返したくなる短編集『ゴーグル』

『ゴーグル』(アフタヌーンKCDX)は『アンダーカレント』『珈琲時間』の豊田徹也による短編集。幻のデビュー作でもある表題作『ゴーグル』が特に素晴らしい。42歳の会社員と24歳の居候が住む部屋に、訳ありの少女が連れてこられて…。なにか劇的なことが起こ…

『大友克洋GENGA展』

15:29 『大友克洋GENGA展』やっと観て来た。一番の感想は「原稿が綺麗」という事。特にホワイト(修正液)の跡がほとんど無いのに驚く。普通、集中線はコマや人物にはみ出して引き、後か直すものだがその痕跡がない。一方切り貼りは結構多く、単行本収録時の…

『オーミ先生の微熱』

23:48 河内遥『オーミ先生の微熱』読んだ。生徒である少年に倒錯した恋心を抱く男性教師。といってもコメディ的要素は薄く、主人公が本人の意思と外れた所で熱血教師として受け入れられていくという変則的な教師もの。軽い絵柄とムードに油断していると案外…

『愛すべき娘たち』

04:04 よしながふみ『愛すべき娘たち』読んだ。母と娘をテーマにした連作短編集。女の人は誰もが誰かの娘である。母は娘に苦痛も愛情も与え、誰もがその影響からは逃れられない不完全な存在である。その事を正確に見つめる厳しさがありつつ、なお愛しさをも…

『さよならもいわずに』

18:08 上野顕太郎『さよならもいわずに』読んだ。作者の実体験を元に、最愛の妻の突然の死とその後の絶望に支配された生活を描く、紛れもない傑作。起こった事をありのまま 濃密に描く没入感と、作品として成立させようという客観性のバランスが優れている。…

『アオイホノオ』4巻

18:49 島本和彦『アオイホノオ』4巻読んだ。80年代初頭のハード環境話が面白い。今回は初代ウォークマン。主人公が「こんなイヤホン・・・」と馬鹿にしつつ聞いた瞬間ぶっ飛んだ気持ちよく分かる。「ステレオ並!!」と驚く背景に寺尾聡(笑)。テープそれか…

『ヴィンランド・サガ』9巻

15:38 幸村誠『ヴィンランド・サガ』9巻読んだ。テンション・マックスの8巻の直後だけに物語は一旦落ち着きモード。とはいえ、生きる目標を失い奴隷として生きるトルフィンと、王として血塗られた道を行く決意をしたクヌートの姿が対照的に描かれ、より深…

『大甲子園』

23:09 なぜか自分の中で水島新司『大甲子園』が熱い。コンビニ漫画版をブックマートでサルベージ。『ドカベン』は暗記するほど読んでるのに比べてこちらは通読一回程度なので内容忘れてるから新鮮。 関東大会の対白新戦からいきなりベストバウト級の熱戦。 2…

『熱病加速装置』

12:22 元町夏央『熱病加速装置』読んだ。4本の短編収録。高1男子の鬱屈した日々を綴る表題作と、別居中の父親との関係に揺れる少女を描くデビュー作『橙』がいい。どこにでもある日常の裏側の屈折した感情にゾッとする感覚は向田邦子っぽい。絵がまだ硬い…

『テルマエ・ロマエ』ヤマザキマリ(BEAM COMIX)

13:00 『テルマエ・ロマエ』一巻やっと読んだ。評判通り面白い!ローマ帝国の浴場施設技師が現代日本の銭湯や温泉にタイムスリップ。様々な技術に感心しローマに持ち帰るカルチャーギャップコメディ。佐々木倫子に通じる知性と上品さが心地良い。主人公の技…

更新変わりに読書メーター

6月の読書メーター読んだ本の数:3冊読んだページ数:531ページトム・ゴードンに恋した少女 (新潮文庫 キ 3-55)「森で9歳の少女が遭難する。彼女は助かるか?」というプロットのみで、一瞬も読者を飽きさせないキングの筆力。読了日:06月29日 著者:スティ…

福満しげゆき『生活』の暗く熱い興奮

「07年おもしろかった漫画」という括りは、もはや6月なので止めますわ。いつもながらやることが中途半端。今後はランダムにおもしろかった漫画を取り上げていきます。さて、今年の初めに読んで密かに大興奮したのが、福満しげゆき『生活』。福満しげゆきと…

’07年おもしろかった漫画(6)異民族坩堝的犯罪喜劇『ディアスポリス-異邦警察』

去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(6)です。馬鹿みたいな感想ですが、これ、凄くおもしろいなあ。漫画を読んで声を出して笑うことって実はあまりないのだが、この作品は電車の中でも構わず吹き出してしまうくらいおもしろい。リチ…

’07年おもしろかった漫画(5)中高年版“サバイバル”『まだ、生きてる…』

去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(5)です。アンチ・ヤンジャン派の自分が珍しく毎週立ち読みしていた本宮ひろ志『まだ、生きてる…』。まだまだこれから、どう展開するのか楽しみにしていたある日、唐突に最終回! 思わず同じくこ…

’07年おもしろかった漫画(4)超暴力活劇『ヴィンランド・サガ』

去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(4)です。こういう作品を読むと、日本の漫画っていまやどんな世界、どんな時代でも自由自在に描けてしまうんだな、と改めて思う。また、遥か昔の外国人が全員日本語を喋っていても気にならないの…

’07年おもしろかった漫画(3)『マエストロ』

去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(3)です。さそうあきらは、初期の名作『愛がいそがしい』の頃から愛読している作家のひとり。 『愛が〜』のようなセックス・コメディ路線にも、『俺たちに明日はないッス』はじめ秀作は多いけど、…

’07年おもしろかった漫画(2)『海獣の子供』

去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(2)です。自分が書店で未知の漫画を選ぶ時の基準って何なのか? 表紙や装丁の雰囲気やオビのコピーに惹かれて…ということもあるけれど、よくやるのは立ち読み対策のビニールを少しずらして、中身…

’07年おもしろかった漫画(1)『そして-子連れ狼刺客の子』

去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(1)です。まずこれ。「萌え」ならぬ「燃え」に飢えているなら絶対おすすめ。 とにかくいちいち面白すぎる! さすが大御所・小池先生、活劇における興奮のツボというものを知り尽くしておられる。…

『岳』とフィクションのなかの“死”

『岳』は、ボランティアの山岳救助隊員が主人公の“山もの”。この主人公が、よくある無垢な純真キャラというやつで少々鼻につくものの、なかなか質の高い作品だと思う。毎回、主人公が遭難者を助けたり助けられなかったりするというストーリーが基本パターン…

『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』の余韻が頭から離れない

小説やマンガを読み、その衝撃や余韻を読み終わった後もしばらく引きずり、なかなか現実世界に意識を戻せないということが、このすれた僕にも稀にあります。今年の前半でいえば(刊行は昨年ですが)村上龍の長編『半島を出よ』、後半ではなんといっても新井…