投売りされた『タイタンの戦い』をサルベージ


最近なぜか「ハリーハウゼンが観たい!」という謎の欲求が噴出。危うく5万超もする『レイ・ハリーハウゼン コンプリート・コレクション』をポチッといってしまいそうな狂った自分がいました。

そんな折、ブックマートの投売りコーナーに500円で打ち捨てられていた『タイタンの戦い』廉価版を発見。とりあえずのハリー欲望を沈めるためもあり、サルベージしてきた次第。

この作品、思えば自分が最初にして最後に劇場で鑑賞したハリーハウゼン映画。テレビの洋画劇場で食い入るように観てきた『シンドバッド』シリーズや『アルゴ探検隊の大冒険』といえば、円谷特撮の劣化と怠慢を敏感に察していた子供の自分にとっては、まさに舶来の香りがする新鮮かつ衝撃の映像体験だった。ゆえに完全新作であり、ハリーハウゼンの集大成でもある『タイタンの戦い』は、まさに待ちに待った1作。で、わざわざ初日に勇んで新宿ピカデリーに出かけた感想といえば、「ルーカス、スピルバーグ映画に比べなんだかもっさりして古臭いなあ」という失礼な(笑)、そして今考えればしごく当然なものだった記憶がある。

いま改めてDVDで見返してみても、映画作品としての全体的な印象はさほど変わらない。ただ、ダイナメーション・シーンだけでなく、ちょっとした合成場面(転がった石像の首の目がカッと開くショットなど)なんかに、現代の完璧だけど印象が薄いVFXでは絶対出せない、異様な禍々しさが宿っているのは間違いない。半人半獣の怪人カリボスの表現を、クローズアップは特殊メイクの俳優、ロングショットにはダイナメーションと使い分けている苦肉の策が、結果的になんだろうけれど、現実とも夢ともつかない幻想的なムードを醸し出す要因になっていたり。

今の目で観てもやっぱりすげえと唸るのは、クライマックス近くの妖女メドゥーサとの対決で、ポイントは、いかにもハリーハウゼンらしいメドゥーサの斬新すぎるデザイン。美女のイメージは捨て去り、下半身を完全に蛇にしてしまった上に、ガラガラ蛇の要素も付け加えたのは凄いアイデアだ。暗闇で尻尾がシャラシャラとせわしなく鳴る、あの効果はおそろしく、柱の陰から意表をついてズルズルと這ったまま出てくる登場シーンは何回観てもゾッとする。

スピーディーさや複雑さでは、『アルゴ探検隊』の骸骨乱舞にはかなわないだろうが、メドゥーサの緊張感の凄まじさは、引退作にしてハリーハウゼンのベスト・シーンのひとつだと思う。オタクですみません。あと生まれてきて。

タイタンの戦い 特別版 [DVD]

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Clash Of The Titans - Roto Figure : Medusa

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