’07年おもしろかった漫画(5)中高年版“サバイバル”『まだ、生きてる…』


去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(5)です。

アンチ・ヤンジャン派の自分が珍しく毎週立ち読みしていた本宮ひろ志『まだ、生きてる…』。まだまだこれから、どう展開するのか楽しみにしていたある日、唐突に最終回! 思わず同じくこの漫画を楽しみにしていた弟に「お、岡田憲三が……!」と即メールしてしまった。あ、“岡田憲三”ってこの漫画の主人公のオッサンです。昔、ジャンプで連載された車田正美男坂』が、不人気ゆえにまだ全然序盤の時点で容赦なく打ち切られた衝撃を久々に思い出したなあ。

果たしてこの漫画、打ち切りだったのか、それとも最初から短期連載予定だったのかはわからない。ただ第1回のトビラだったかに「テーマは定年」とでかい字で宣言されていた印象から、本宮先生の結構な意気込みを感じていたのは僕だけだろうか。

60歳で定年を迎えた瞬間、家族から捨てられ、財産も奪われた元会計係の男、岡田憲三。何度か首吊り自殺を試みるが、なかなか死ねず、迷い込んだ山中で「どうせ1回死んだんだ」と開き直り、世捨て人のように暮らし始める。 このへん、さいとうたかをの名作『サバイバル』ばりだが、自給自足生活の描写は結構適当で無理がある。ただ「人生、何にもなかった」と嘆いた男が、誰にも気兼ねしない(つまり人間関係というやつが一切ない)生活を開始した途端、妙にイキイキしてくる描写がありがちながら感動的で、知らないうちに次回が楽しみになっていったのだ。

例えば不審者扱いされ警察に拘留された岡田憲三が、横柄で威圧的な態度の刑事にはじめは気おされながら、「36年も大人しく会社員してたんだから1度くらいはキレてみよう…」とばかりに、「俺は何十年も納税してたんだ!!年長者を敬え!!その態度は何だ!!」とブチキレるシーンがあり、思わず涙が出そうになった(なんで笑)。その刑事が「す、すいません」と即座に謝るのがまた…。
同じように山中で自殺を図った若い女性を助けたあたりから、物語は一気に投げやりな打ち切りモードに突入。なんとも消化不良な結末を迎えてしまうのだが、もし長期連載化されていたら、結構切実なテーマを持ち込めた作品になったと思うだけに無念。

でも本宮先生、打ち切りなどに全然めげず、即座に売れセンな『風の陣』の連載を開始! さすが昔からの漫画家さんはタフだわ。

まだ、生きてる… (ヤングジャンプコミックス)

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