’07年おもしろかった漫画(3)『マエストロ』
去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(3)です。
さそうあきらは、初期の名作『愛がいそがしい』の頃から愛読している作家のひとり。
『愛が〜』のようなセックス・コメディ路線にも、『俺たちに明日はないッス』はじめ秀作は多いけど、近年はヒット作『神童』に続く『トトの世界』『コドモのコドモ』など、音・言葉・性などのテーマに正面から向き合った、ある種、文化人類学的アプローチの、シリアスで感動的な作品の印象が強かった。
『神童』はクラシック音楽を扱った作品ではあるけれど、特に後半にいくに従って哲学的展開に軸足が移った。これに対し、『マエストロ』では音楽そのものを奏でる喜びや興奮を描く、まさに本格的な「クラシック漫画」である。ちなみに僕自身は、クラシックまったく詳しくないです。でも、この漫画の音楽の表現を読んでいると、普段聞かないクラシックが無性に聞きたくなってくる。
一方、クラシック・オーケストラの楽団員という、ちょっと世間の常識とは違う職人さんたちの心理、生態に踏み込んでいる点が面白い。「だから管楽器のやつらとは気が合わないんだよ!」的なセリフが飛び交い、さそうお得意の、世間からはずれた人々によるほろりとさせる人情話も、各人物が担当する楽器の薀蓄と絡めながら描かれる工夫がある。
楽団員ひとりひとりのエピソードを追っているため、全体の話はなかなか進まないが、個人的には『神童』よりも好きかもしれない。クラシックのCD、買いに行こうかな。
- 作者: さそうあきら
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2007/01/27
- メディア: コミック
- 購入: 3人 クリック: 19回
- この商品を含むブログ (36件) を見る
愛がいそがしい 1 (双葉文庫 さ 20-9 名作シリーズ)
- 作者: さそうあきら
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2007/02
- メディア: 文庫
- クリック: 4回
- この商品を含むブログ (8件) を見る
日本映画専門ブログ「Hoga Holic」
・『凍える鏡』主演:田中 圭インタビュー
・真木よう子写真集情報
・映画『すみれ人形』レビュー
よろしければご覧下さい。