’07年おもしろかった漫画(3)『マエストロ』


去年おもしろかった漫画を今更ながら振り返ろうかと。その(3)です。

さそうあきらは、初期の名作『愛がいそがしい』の頃から愛読している作家のひとり。
『愛が〜』のようなセックス・コメディ路線にも、『俺たちに明日はないッス』はじめ秀作は多いけど、近年はヒット作『神童』に続く『トトの世界』『コドモのコドモ』など、音・言葉・性などのテーマに正面から向き合った、ある種、文化人類学的アプローチの、シリアスで感動的な作品の印象が強かった。

『神童』はクラシック音楽を扱った作品ではあるけれど、特に後半にいくに従って哲学的展開に軸足が移った。これに対し、『マエストロ』では音楽そのものを奏でる喜びや興奮を描く、まさに本格的な「クラシック漫画」である。ちなみに僕自身は、クラシックまったく詳しくないです。でも、この漫画の音楽の表現を読んでいると、普段聞かないクラシックが無性に聞きたくなってくる。

一方、クラシック・オーケストラの楽団員という、ちょっと世間の常識とは違う職人さんたちの心理、生態に踏み込んでいる点が面白い。「だから管楽器のやつらとは気が合わないんだよ!」的なセリフが飛び交い、さそうお得意の、世間からはずれた人々によるほろりとさせる人情話も、各人物が担当する楽器の薀蓄と絡めながら描かれる工夫がある。

楽団員ひとりひとりのエピソードを追っているため、全体の話はなかなか進まないが、個人的には『神童』よりも好きかもしれない。クラシックのCD、買いに行こうかな。


マエストロ 2 (アクションコミックス)

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