何度も読み返したくなる短編集『ゴーグル』


『ゴーグル』(アフタヌーンKCDX)は『アンダーカレント』『珈琲時間』の豊田徹也による短編集。幻のデビュー作でもある表題作『ゴーグル』が特に素晴らしい。

42歳の会社員と24歳の居候が住む部屋に、訳ありの少女が連れてこられて…。なにか劇的なことが起こるわけでもない、なんでもない時間の切り取り方が切なくて、正直少し泣いてしまった。安易な救済に走らず、起こってしまったこととそれでも続く未来を、ただ静かに見つめているような作者の姿勢が好み。

この人の漫画はいつも食べ物や飲み物が印象的。『ゴーグル』に出てくる、深夜に食べる麻婆豆腐や散歩の途中に買い食いするコロッケなどがたまらなく美味そう。

併録の短編のタイトルに、そのものずばり『とんかつ』なんてのもあるし。装丁も綺麗だし、とにかくおすすめの作品です。



ゴーグル (KCデラックス アフタヌーン)

ゴーグル (KCデラックス アフタヌーン)